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2021.6.28 COLUMN

「終活」としての死後事務委任契約について

 最近、「終活」という言葉をよく耳にします。

 文字どおり、「人生の終わりのための活動」ですが、自分の死と向き合い、最後まで自分らしい人生を送るための準備や、これまでの人生を振り返り、家族やお世話になった友人・知人らに感謝しつつ、人生の総括をすることなどを意味すると考えられます。

 今回は、その終活の一環としての死後事務委任契約について説明します。

 ところで、人が亡くなった場合、その後に必要な事務処理には様々なものがあります。

 思い付くままに挙げてみても、葬儀・埋葬の手配、行政官庁等への諸届出(健康保険や年金関係を含む。)、入院・施設入所費用の支払いや清算、ペットの処遇(引取先の手配等)、親族・知人等への連絡、(賃借している)住居の明渡し、遺品の処分、電気・ガス・水道等のライフラインに関する契約の解約手続き、通信(スマホ)に関する契約の解約手続き、SNS等のアカウントの閉鎖・削除、パソコンやスマホからのデータの消除など、広範かつ多岐に上ります。

 これまで、又は、通常は、故人の親族・相続人がこれら一連の事務を処理するケースが多かったものと思われます。しかし、人生100年時代といわれる中での少子高齢化、核家族化の進展に加え、最近の、生涯未婚率(50歳時点で一度も結婚したことのない人の割合)の上昇傾向などにより、単身世帯(いわゆる「お一人さま」)の割合が増えており、特に、65歳以上の単身世帯は2040年には男女とも2割を超えると推計されています。

 また、高齢の夫婦で身寄りがないというケースや、家族がいても、疎遠であったり、迷惑をかけたくないなどの理由で、家族に頼ることができない、又は頼りたくないというケースも少なくないでしょう。

 この点、ある自治体で実際にあった事例です。

 高齢の夫婦2人で、先に亡くなった夫は自分の墓に入りました。しかし、後に一人暮らしになった妻が亡くなった時には、身寄りがなく、その妻以外にどこに墓があるか知る者はいませんでした。結局妻については自治体が火葬にして、遺骨が無縁納骨堂に収められました。

 そこで、上記のような方々にとっては、行政書士、司法書士、弁護士、税理士のほか、NPOや企業、一部の社会福祉法人など様々な団体などの、いずれかとの間で、様々な死後事務の処理をお願いする委任契約を生前に締結して十全な準備しておくことが選択肢の一つになり、「終活」の重要な一場面になると思います。

1 他の制度との関係 ~成年後見制度や遺言で対応できないの?

  「成年後見制度」は、判断能力が衰えてその人が亡くなるまでのサポートであり、本人が亡くなった時点で終了します。家庭裁判所が選任した法定後見人が、例外的に一部の死後事務(弁済期の来た債務の弁済、家庭裁判所の許可を得た上での火葬・埋葬に関する契約の締結など)を行うことができるだけです。

 また、「遺言」は死亡後に執行されますが、法的な効力があるのは財産に関するものと身分に関するもの等に限定されます。「付言」で死後事務に関するものを記載しても法的な効力はありません。

 これらの制度で、対応することは難しいと考えられます。

2 死後事務委任契約の締結に当たって注意すべきことは?

 行政書士等の士業者に相談する場合は、①現在どのような不安や悩みがあるのか、②広範で多岐にわたる死後事務のうち、具体的にどのような事務の委任を希望しているのか、を明確に伝える必要があります。その際、家族構成や親族との関係、財産の状況なども説明するとよいでしょう。

 委任事務の執行には費用がかかりますが、これは委任者(その相続人)の負担となります。実務的には、生前にその費用を受任者に預けることが妥当ですし、契約中に、前払費用に関する条項をその清算の方法等を含めて定めておくのが望ましいでしょう。

 受任者の報酬については、特約がなければ生じませんので、受任者が報酬を希望する場合は特約として定めておく必要があります。執行費用と同様に報酬に関する条項をその清算の方法等を含めて定めておくのが望ましいと思います。通常は、執行費用と報酬の支払いに充てるために契約締結時に一定の「預託金」を受任者に交付することになると思います。

 また、死後事務委任契約の趣旨を損なわないように、委任者の死亡によっては契約が終了しない旨の特約、及び、委任者の相続人は原則として契約を解除できない旨を定めることになります。

 死後事務委任契約について詳細を知りたいという方は、お気軽に相談していただければと思います。

                                (九段南行政書士事務所)