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2021.1.18 COLUMN

散骨や樹木葬を希望する場合はどうすればいいの?

 自然回帰に対する願望を持っている方や、核家族化と少子化が進み、家族に墓の世話等で迷惑をかけたくないという思いを持つ方などは、散骨に関心を抱き、これを希望する場合が増えているように思います。費用がかかる一般的な葬儀への不満も理由の一つかもしれません。

 この散骨とは、火葬場で焼いた遺骨(焼骨)を、粉状(遺灰)にして、海や大地に撒いて自然に還す葬送の一方法のことをいいます。これを専門的に扱う業者も存在します。

1 散骨は法律に違反しないのか

 ところで、遺灰を撒くことについては、そもそも法律に違反しないのか心配になります。この点、遺骨に関しては、「墓地、埋葬等に関する法律」があり、その第4条第1項は、「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行ってはならない。」と規定していますし、また、刑法190条は遺骨(死体)の遺棄を禁じています。

 散骨がこれらの法令に違反するかどうかが問題になります。

 これまでに裁判所の判断は出ていません。また、国の見解は、「墓地、埋葬等に関する法律においてこれを禁止する規定はない。この問題については、国民の意識、宗教的感情の動向等を注意深く見守っていく必要がある。」というものとされています。

 結論的には、人々の宗教的感情に配慮し、社会的な常識の範囲内で節度をもって行われる限り、葬送の一方法として許容されると考えられています。

2 散骨の場所、注意事項について

 散骨の場所については、当然ですが注意が必要です。

 他人の私有地はもちろん、公共の河川や湖、水源に近い場所、海水浴場・養殖場・漁場の近くなどは避けるべきでしょう。

 条例で散骨を禁止している自治体もあります。

 この点、東京都福祉保健局のホームページで「散骨の留意事項」として、「散骨は『墓地、埋葬等に関する法律』に規定されていない行為であるため、法による許可や届出の手続はありませんが、念のため、地元の自治体に確認することをお勧めします。」「海や川での散骨では、水産物などへの風評被害が生じるおそれがあります。また、山での散骨では、土地所有者や近隣の人とのトラブルが生じた例、撒かれた骨を目にした人からの苦情や農産物への風評被害のおそれがあります。こうしたトラブルが生じないよう、人々の宗教的感情に十分に配慮することが必要です。」とされているのが大いに参考になります。

 (参考)東京都福祉保健局のURL

  http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/index.html

 

 いろいろなトラブルが想定される陸地よりも、沖合で行う海上散骨を選ぶ人が多いようです。これを「海洋葬」として扱う業者もいます。

 散骨をお考えの方は、遺言の「付言事項」でその旨を明示し、信頼できる業者に予約を取って、その実施を委ねることとするのが妥当と思います。

 これまでに何度かお話しした「負担付き遺贈」の方法も考えられます。

 また、御自身が亡くなった後に、御家族が葬儀の方法で困惑等しないために、生前、御家族に散骨希望の点を伝えて、その了解を得ておくことも重要でしょう。

 

 樹木葬について

 樹木葬とは、墓地として許可された場所に遺骨を埋め、樹木を墓標として埋葬する方法です。

 墓園全体を樹木葬専用とする霊園と、一般墓地の一区画を樹木葬墓地とする霊園があります。墓地として許可された場所以外の区域で行うことはできません。

 樹木葬をお考えの方は、予め、希望する霊園側に埋葬区域や費用等を確認しておき、遺言の「付言事項」でその旨を明示するのが妥当でしょう。散骨と同様に「負担付き遺贈」の方法も考えられます。

 生前、御家族に樹木葬希望の点を伝えて、その了解を得ておくことが重要であることは散骨の場合と同様です。

      (九段南行政書士事務所)