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2020.9.6 COLUMN

「配偶者居住権」について分かり易く解説します!

 4月に始まった「配偶者居住権」ってどういうもの?

相続法の改正で、配偶者の立場を守る新たな仕組みができました。

今回は、「配偶者居住権」について解説します。

高齢化の進展により平均寿命が延び、夫婦の一方が亡くなった後に、残された配偶者が長期間の生活を継続することも少なくありません。その場合、配偶者が住み慣れた自宅で生活を続けるとともに、老後の生活資金として預貯金等の資産も確保したいと希望することも多いでしょう。そこで、遺言や遺産分割の選択肢として、配偶者が、無償で住み慣れた自宅に居住する権利を取得することができるようになりました。

夫を亡くしたAさんのケース

夫を亡くしたAさん(75歳)のケースで具体的に説明します。夫は再婚でAさんとの間に子どもはいませんが、先妻との間に長女がいて、遠隔地に住んでいる長女とAさんは疎遠です。夫の遺産は自宅の土地建物3000万円と預金2000万円の合計5000万円。法定相続分は、配偶者と子で各2分の1ですから、それぞれ2500万円ずつになります。Aさんは夫を亡くした後も慣れ親しんだ家に住み続けたいと思っていますが、長女は家を売って平等に分けたいと考えています。

このケースでAさんが自宅の土地建物(3000万円)をまるごと相続すると、それだけで法定相続分の2500万円を超えてしまい、長女の不足分500万円をAさんは出さなければならない事態になってしまいます。Aさん自身の財産が潤沢であれば問題はないでしょう。でも、Aさんの自分名義の預金が限られていると、住む場所があっても今後の生活費が不足してしまいます。

そこで、新設されたのが「配偶者居住権」です。亡くなった人の配偶者が自宅に無償で住み続けることができる権利であり、所有権よりは価値が低いと評価されます。その分だけAさんが取得する預金は増えることになります(例えば、配偶者居住権を1000万円と評価すると、Aさんの法定相続分は2500万円だから更に預金1500万円を取得することができます。この場合、長女は、配偶者居住権の負担の付いた自宅所有権2000万円と預金500万円を取得することになります。)。

この配偶者居住権は、遺言等によって、終身でも、期間を区切っても設定することができます。法務局で登記の手続をしておくと、仮に居住している建物の所有権が他に譲渡された場合でも、配偶者居住権を主張することができます。

注意すべき点

特に注意すべき点を3つ挙げておきます。

配偶者居住権は、相続が発生した時点で、その自宅に住んでいた配偶者にだけ認められ、別居をしていた場合は認められないこと。

二つ目は、配偶者居住権は、他に売却できないし、配偶者の死亡によって消滅するので相続させることもできないこと。

三つ目は、配偶者居住権の価値の評価方法については、土地建物の評価額、建物の築年数、配偶者の年齢(平均余命)などの条件に応じて計算されること。この点についての詳細は、法務省のホームページを参照ください。http://www.moj.go.jp/content/001263589.pdf

配偶者居住権を遺言にどのように記載するかなど、不明点ありましたら、お問い合わせください。九段南行政書士事務所