親としての無力感
「子供むけキャリア本」の出版が相次いでいると今朝の新聞記事にあった。背景には親サイドの戸惑いがあるようだ。様々な新しい仕事の誕生もそうだが、一番の戸惑いは、就職への価値観の相違にあるように思う。親は良かれと思って自らの経験に基づいて就職へのアドバイスをする。その結果、自身のアドバイスが全く的外れであることを子供との会話の中で親は自覚することになる。久々の出番とばかりに饒舌にアドバイスしようものなら、「そんなの古いから。」と鼻で笑われるのがオチである。親としての無力感で悲しくなるくらいだ。これは私自身が経験したことだ。
親の就活アドバイスは100パーセント見当違い
今就活中の子どもの親世代の多くは、自身の親とは就職の価値観にさほど相違はなかったように思う。「生涯安泰そうな就職先」が好まれていた。しかし、今は、異なる。「安泰か」という視点ではなく、「その後の転職に有利な就職先か」という視点なのだ。これは、我が子に限らず、友人知人のお子さんもそのようである。今更ながら、キャリアコンサルタントの先生がおっしゃっていた言葉が思い出される。「お子さんがいらっしゃる方は、〇〇会社がいいよ等と自分の価値観に基づいてお子さんに就職のアドバイスをしないでくださいね。そのアドバイスは、100パーセント見当違いで間違ってますから」との言葉。はっきり言う先生だなぁと当時は思ったものだが、その通りであると今は私も思う。価値観の変容のスピードがかなり速くなっているのだ。
子どものキャリア教育について
今、教育現場でもキャリア教育が盛んだ。様々な仕事紹介や、ある仕事について生徒に調べさせることが多いようだ。そうしたことも大事だが、早い段階から子どもに税金や社会保険について教えることも大事ではないかと思う。(実際、給与明細を見て、どういったお金が引かれてこの手取り額になっているのか、理解している新社会人は少ないのではないだろうか。)働いている人間が納めている税金や保険料を学ぶことは、子どもが社会の仕組みを知り、その仕組みの中で社会の一員として生活していることを学ぶ絶好の機会にもなると思う。また、納めているということはこれらを扱う窓口があるということ、更には、困ったとき、苦しいときには相談窓口があるということを知ることにも繋がる。各自治体、省庁のホームページにはそうした窓口や手続の情報が掲載されている。(興味のある省庁のホームページは時折アクセスする習慣は持ちたいものだ。)国(所得税)と自治体(住民税)の違いなど様々な仕組みや窓口を知るきっかけにもなる。政治にも無関心ではいられなくなるのではないだろうか。目先の職業紹介だけではなく、社会の仕組みを知る場としてのキャリア教育が望まれる。(九段南行政書士事務所)